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脾臓は免疫系の重要な器官で、血液をろ過し、古くなったり傷ついたりした赤血球を除去する役割を担っています。また、感染症と戦い、抗体を産生する役割も担っています。脾臓の組織切片は、脾臓の構造と機能をよりよく理解するための研究や、脾臓腫瘍や自己免疫疾患など、脾臓に影響を及ぼす疾患の研究に必要です。

脾臓切片を作成する目的

脾臓切片を作成する目的は、研究の焦点によって異なりますが、以下のような理由で行われることが多いです。脾臓は免疫応答や血液濾過に関わる重要な臓器であるため、免疫学的、生理学的、病理学的な研究において頻繁に使用されます。

免疫細胞の解析

脾臓は、T細胞、B細胞、マクロファージなど、多種多様な免疫細胞が集まる場所です。脾臓切片を作成し、免疫染色やフローサイトメトリーを用いて、これらの免疫細胞の分布、状態、機能を解析できます。

  • リンパ球の局在:脾臓は白脾髄と赤脾髄に分かれ、それぞれ異なる免疫機能を持ちます。白脾髄ではB細胞が、赤脾髄では血液を介した免疫応答が行われます。切片を用いてそれぞれの機能部位を調べることができます。

  • 炎症や免疫反応の解析:病原体感染時の免疫応答や炎症反応を、脾臓内で追跡するために切片を使います。特に、ウイルスや細菌に対する体内の反応を観察できます。

病理学的解析

脾臓の組織学的変化を観察するために、病理学的解析の一環として切片が作成されます。

  • 腫瘍や癌の研究:脾臓の腫瘍や転移性癌がある場合、その病理学的構造や細胞の異常を切片を通じて確認できます。異常な細胞の増殖や分布、組織の変性を調べることが目的です。

  • 自己免疫疾患:自己免疫疾患において、脾臓内の免疫細胞の異常を調査するために切片が利用されます。例えば、自己免疫性溶血性貧血などの病態で、脾臓がどのように影響を受けているかを解析できます。

血液濾過の研究

脾臓は古くなった赤血球を除去する役割があるため、血液濾過に関わる研究でも使用されます。

  • 赤脾髄の機能:脾臓の赤脾髄は、古くなった赤血球や異常な血球を破壊する場所です。切片を作成することで、このプロセスを細胞レベルで観察できます。

  • 血液疾患の研究:脾臓の血液濾過機能が損なわれると、血液疾患や免疫疾患が発生することがあります。切片を使って、こうした疾患における脾臓の異常な構造や機能を明らかにすることができます。

感染症研究

脾臓は感染に対する全身免疫応答の中心であるため、感染症研究においても重要な組織です。

  • 病原体の局在解析:脾臓内におけるウイルスや細菌の感染部位を調べるために、切片を用います。感染部位の特定や、病原体に対する免疫応答の観察が可能です。

  • 抗原提示の解析:脾臓の中で、どの細胞が抗原提示を行い、免疫応答がどのように誘導されているかを解析するために切片を使用します。

発生学・再生研究

脾臓の発生過程や再生能力を調べるためにも、組織切片が作製されます。

  • 器官発生の研究:発生学的な観点から、脾臓がどのように形成されるか、その細胞の成長や分化を調べるために切片を使います。

  • 再生医療:脾臓の再生能力や、脾臓内の特定の細胞群の再生メカニズムを明らかにする研究で、切片が利用されます。

薬剤効果の評価

新しい薬剤や治療法が脾臓に及ぼす影響を評価するために、脾臓切片が使用されます。

  • 薬剤による組織変化:脾臓に作用する薬剤が組織にどのような変化を引き起こすかを観察するために、切片を使って病理学的変化を調査します。

  • 免疫機能の調節効果:免疫抑制剤や免疫賦活剤などの薬剤が、脾臓内の免疫細胞に及ぼす影響を評価します。

これらの目的に応じて、脾臓切片は様々な実験技術と組み合わせて使用され、免疫、病理、生理、発生、薬理など多方面で重要な情報を提供します。

脾臓研究のアプリケーション例

脾臓研究のアプリケーションは、免疫学、生理学、病理学、薬理学などの多分野にわたり、以下のような実践的な応用がされています。脾臓は免疫応答、血液濾過、炎症反応に重要な役割を果たすため、その研究は多岐にわたります。

感染症研究

脾臓は感染に対する全身免疫応答の中枢であり、感染症研究において非常に重要な役割を果たします。

  • マラリア研究:マラリア原虫は脾臓内で分解され、免疫応答が誘発されます。脾臓を用いた研究では、原虫のライフサイクルや宿主の免疫応答、薬剤の有効性などを解析することができます。

  • ウイルス感染のメカニズム:HIV、インフルエンザ、SARS-CoV-2などのウイルス感染に対する免疫応答を研究する際、脾臓の役割が注目されます。脾臓におけるウイルスの増殖や、抗原提示細胞の働きを解析し、ワクチンや治療薬の効果を評価します。

自己免疫疾患の研究

脾臓は免疫系の中心的な役割を果たし、自己免疫疾患に関わる研究においても重要です。

  • 全身性エリテマトーデス (SLE):SLEなどの自己免疫疾患において、脾臓内の異常な免疫反応が疾患進行に寄与します。脾臓研究を通じて、T細胞やB細胞の異常な活性化メカニズムや、病気の進行に伴う組織変化を調べます。

  • 自己免疫性溶血性貧血:この疾患では、赤血球が自己抗体によって攻撃され、脾臓内で破壊されます。脾臓研究を通じて、赤血球破壊のメカニズムや免疫系の関与を解明し、治療戦略を開発します。

がん免疫療法の開発

脾臓は免疫応答を調節する重要な臓器であり、がんに対する免疫療法の研究にも役立ちます。

  • がんワクチンの開発:脾臓を用いて、がん細胞に対する免疫応答を刺激するがんワクチンの有効性を評価します。特に、樹状細胞を使った免疫療法で、脾臓内での抗原提示とT細胞活性化を調べることができます。

  • 免疫チェックポイント阻害剤:脾臓内のT細胞ががん細胞を攻撃する際、免疫チェックポイント阻害剤の効果を研究することで、新しい免疫療法の開発に貢献します。

移植免疫の研究

臓器移植後の拒絶反応において、脾臓の役割は重要です。移植免疫に関わる研究で脾臓を用いることがあります。

  • 臓器拒絶反応:臓器移植後、脾臓での免疫応答が移植片の拒絶反応に関与します。脾臓のT細胞やB細胞の反応を解析し、拒絶反応を抑える免疫抑制剤の効果を評価します。

  • 骨髄移植:骨髄移植後、脾臓で新しい免疫系がどのように再構築されるかを調べ、移植後の免疫応答や移植片対宿主病(GVHD)の発症メカニズムを研究します。

血液疾患の研究

脾臓は古くなった赤血球を破壊・除去する機能を持っており、血液疾患の研究においても重要です。

  • 遺伝性球状赤血球症:この疾患では、脾臓で赤血球が異常に破壊され、貧血が引き起こされます。脾臓を用いた研究では、赤血球破壊のメカニズムや治療法を探ることができます。

  • 血小板減少症:脾臓での血小板の異常な濾過・破壊が血小板減少症の原因になることがあります。脾臓摘出(脾摘)がこの疾患の治療に使われる場合もあり、その効果を研究します。

炎症性疾患の研究

脾臓は全身性炎症に大きな影響を与えるため、炎症性疾患の研究にも応用されています。

  • 敗血症:敗血症における全身性炎症反応に対して、脾臓の免疫細胞の役割を研究し、炎症を抑える新しい治療法を開発する際に利用されます。

  • 慢性炎症疾患:慢性炎症性疾患(例えば、リウマチ性関節炎や炎症性腸疾患)において、脾臓の免疫系の調節機能が関与します。脾臓を使って免疫応答を解析し、治療法の開発に役立てます。

老化研究

脾臓の機能は加齢によって変化し、免疫系の老化に伴う病態の研究に応用されています。

  • 免疫老化:加齢とともに、脾臓内の免疫細胞の数や機能が変化し、感染症やがんのリスクが増大します。脾臓を用いた研究では、免疫老化のメカニズムを解明し、老化に伴う免疫不全に対する治療法を検討します。

薬剤効果の評価

脾臓をモデルとして、薬剤が免疫系や血液系に与える影響を評価することができます。

  • 免疫抑制剤の評価:移植手術や自己免疫疾患の治療に使用される免疫抑制剤の効果や副作用を、脾臓を用いて評価します。

  • 抗がん剤の評価:抗がん剤が免疫系に与える影響を脾臓を通じて調べ、薬剤の安全性や効果を確認します。

これらのアプリケーションは、脾臓が免疫や血液に深く関わるため、様々な疾患や治療法の理解と開発において重要な役割を果たしています。

Compresstome®ビブラトームの利点

  • 優れた形態:組織の安定化により、組織の構造的完全性が保たれます。

  • 滑らかな切片:組織安定化=アーチファクトなし 

  • 高速:圧縮による組織の安定化により、切片作製が格段に速くなります。

  • メンテナンスが簡単:オートZero-Zは、キャリブレーション不要のZero-Zを意味します。

  • 使いさすさ:多くの研究室ではCompresstomeによって1回目または2回目で多くの生細胞を含む非常に滑らかなスライスを得ることができます。

従来の振動ミクロトームの問題点

  • 形態の変化:組織の断裂、折れ曲がり、破砕により、組織に歪みが生じる。

  • スライス厚のばらつき:不均一な厚みはタンパク質の可視化に影響を与える。

  • 切断アーチファクト:タンパク質染色に影響を与える明らかな切断アーチファクト。 

  • メンテナンスとキャリブレーション:専門的な知識を必要とし、メンテナンスに時間がかかる。

  • 習得の難しさ:特に組織前処理に慣れていないユーザーにとっては、完璧な結果を得るには多くの練習が必要。

Compresstome® ビブラトーム

実験の質は、組織切片の質に左右されます。Compresstome® ビブラトームは、他のビブラトームと比較して、薄切片をより安定的に、より信頼性高く作製できる ことが科学的に証明されています。

Compresstome® のビブラトームは、以下のような方法で、ビビリ痕のない安定した厚さの組織切片を作成します。

  • 360度のアガロース包埋により、切断プロセス中に組織を安定化させる。

  • 高速スライスを可能にすることで、連続切片作製の時間を短縮します。

  • 高周波振動メカニズムにより、ビビリマークを低減または除去。

  • 特許取得のAuto Zero-Z®テクノロジーにより、カッティングブレードのZ軸方向のたわみをなくすことで、ビビリマークを低減。

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Compresstome® 振動式ミクロトームと他社製振動式ミクロトームで切断した組織切片の比較画像

Compresstome® 振動式ミクロトームと他社製振動式ミクロトームの切片の比較(A, C)。他社製ビブラトームで同じ切削速度と振動で組織スライスを作製した場合、組織スライスの表面にビビリマークが発生している。

脾臓切片作製 - 推奨モデル

VF-510-0Z

振動ミクロトームCompresstome® VF-510-0Zは特許取得済みの圧縮技術によりビビリ・チャタリングなしで切片を作製し、急性組織上の多くの生存細胞を維持。良質な実験結果を保証します。

  • 従来のビブラトームの5倍の速さで切開し、ブレードを組織に当てる時間を短縮し、より良い切開を実現

  • Auto Zero-Zテクノロジーにより、Z軸のたわみを1 µm未満に低減

  • 持ち運びに便利な軽量設計

  • 完全自動化:切開+厚み調整

組織切片作成スライサー

論文

Barclay WE, Aggarwal N, Deerhake ME, Inoue M, Nonaka T, Nozaki K, Luzum NA, Miao EA, Shinohara ML. The AIM2 inflammasome is activated in astrocytes during the late phase of EAE. JCI Insight. 2022 Apr 22;7(8):e155563. PMID: 35451371; PMCID: PMC9089781. PDFダウンロード

Bose SK, White BM, Kashyap MV, Dave A, De Bie FR, Li H, Singh K, Menon P, Wang T, Teerdhala S, Swaminathan V, Hartman HA, Jayachandran S, Chandrasekaran P, Musunuru K, Jain R, Frank DB, Zoltick P, Peranteau WH. In utero adenine base editing corrects multi-organ pathology in a lethal lysosomal storage disease. Nat Commun. 2021 Jul 13;12(1):4291. PMID:  34257302; PMCID: PMC8277817. PDFダウンロード

Vogler J, Böttger R, Al Fayez N, Zhang W, Qin Z, Hohenwarter L, Chao PH, Rouhollahi E, Bilal N, Chen N, Lee B, Chen C, Wilkinson B, Kieffer TJ, Kulkarni JA, Cullis PR, Witzigmann D, Li SD. Altering the intra-liver distribution of phospholipid-free small unilamellar vesicles using temperature-dependent size-tunability. J Control Release. 2021 May 10;333:151-161. Epub 2021 Mar 23. PMID: 33771624. PDFダウンロード

振動ミクロトーム・ビブラトームのモデル

VF-510-0Z

全自動

アプリケーション

  • 電気生理学

  • スライス培養

  • イメージング

VF-210-0Z

半自動・手動厚み送り

アプリケーション

  • 電気生理学

  • イメージング

  • スライス培養

VF-300

全自動

アプリケーション

  • 電気生理学

  • イメージング

VF-800-0Z

大口径ビブラトーム、ヒト、霊長類、全臓器用

アプリケーション

  • 脳(固定)

  • 免疫組織化学

  • ハイスループット切片作製

回転式ミクロトームのモデル

RF-600

手動

アプリケーション

  • 病理組織学

  • 免疫組織化学

  • 植物研究

回転式ミクロトーム RF-600

RF-800

半自動、手動による厚さ調整

アプリケーション

  • 病理組織学

  • 免疫組織化学

  • 植物研究

RF-1000

全自動

アプリケーション

  • 病理組織学

  • 免疫組織化学

  • 植物研究

アプリケーション

臓器システム

脂肪
副腎
乳房
心臓
腎臓
肝臓
筋肉
膵臓

実験

オルガノイド
大サンプル(全臓器)切片化
病理組織学
ハイスループットセクショニング
遺伝子シーケンス(単一細胞分離)
電子顕微鏡

動物モデル

ひよこ
魚類
モルモット
ヒト
マウス
ブタ
ラット

その他の製品

flexiVent

肺機能測定・解析

flexiVent肺機能測定・解析ソリューションは、in vivo呼吸力学測定のゴールドスタンダードとして広く知られています。従来の肺換気の抵抗とコンプライアンス力学を超え、中枢気道、末端気道、実質の力学的特性に関する重要な詳細を測定・解析します。

flexiVentは実験条件を精密にコントロールすることで、最高の感度と再現性を実現しています。

オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店であり、日本国内においてemka TECHNOLOGIES社との唯一の取引窓口です。

flexiVent肺機能測定・解析ソリューション
flexiVent肺機能測定・解析ソリューション-オプション
flexiVent肺機能測定・解析ソリューション-拡張
flexiVent肺機能測定・解析ソリューション-サイズ

vivoFlow

呼吸機能解析

vivoFlowは無拘束での呼吸機能解析装置です。全身、ヘッドアウト、ダブルチャンバーでの呼吸機能解析を提供します。

プレチスモグラフィは、意識のある自発呼吸の実験室被験者の肺機能を研究するための標準的な方法です。気圧脈波法では、被験者が呼吸している間、薬物やその他の刺激にさらされる前後に生じる流量と圧力の変化を測定します。さまざまな被験者のサイズやタイプに容易に適応でき、被験者を連続した実験日に何時間も研究する縦断的研究によく使用されます。

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Etaluma Lumascope

インキュベーター内で使用できる3色蛍光ライブセルイメージング蛍光顕微鏡

EtalumaのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。日々顕微鏡を使用する科学者によって考案、設計され、そのコンセプトデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。

多点観察モデル、定点観察モデルがあり、様々な観察シーンに対応できます。

Etaluma Lumascope LS850
Etaluma Lumascope LS820
Etaluma Lumascope 観察画像1
Etaluma Lumascope 観察画像2
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