セルイメージングシステム
- Orange Science
- 2月21日
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更新日:3月26日
セルイメージングシステムとは
セルイメージングシステム(Cell Imaging System)とは、細胞の形態や動態、機能を可視化し、解析するための装置や技術の総称です。セルイメージングシステムと使用し、生物学的サンプルや細胞を観察します。これにより、細胞の内部構造や機能、相互作用をリアルタイムで可視化することができます。一般的な技術としては、顕微鏡を使用したものが多く、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、またはスーパー解像度顕微鏡などが含まれます。これらのシステムは、細胞内の特定のタンパク質や分子、細胞膜の動き、さらには細胞間の相互作用などを詳細に観察するのに役立ちます。
また、セルイメージングシステムは、医療研究や細胞生物学、薬物開発などの分野で重要な役割を果たしており、細胞の挙動を追跡し、病気のメカニズムを解明するために利用されます。主に以下のような目的で使用されます。
主な用途
細胞の構造観察: 細胞の形や内部構造(核、細胞小器官など)を観察する。
細胞の動態解析: 細胞分裂、移動、相互作用などをリアルタイムで追跡する。
細胞機能の評価: 細胞内の特定分子やイオンの動きを測定し、機能的な変化を解析する。
薬剤評価: 薬剤が細胞に与える影響を評価し、医薬品開発や毒性試験に利用する。
主要な種類と技術
蛍光顕微鏡: 蛍光標識した分子や細胞を観察する。
共焦点レーザー顕微鏡: 特定の焦点面の画像を取得し、高解像度で三次元解析が可能。
ライブセルイメージング: 生きた細胞を長時間にわたって観察する技術。
高内分解能顕微鏡(超解像顕微鏡): ナノメートルレベルの解像度で細胞を観察。
位相差顕微鏡・微分干渉顕微鏡: 無染色の生細胞を観察するのに適している。
このように、セルイメージングシステムは細胞生物学、薬理学、がん研究など、幅広い分野で活用されています。
セルイメージングシステムを使用する目的
セルイメージングシステムを使用する目的は、細胞の構造や機能を可視化し、詳細に解析することです。具体的な目的は以下のように分類できます。
1. 基礎研究
細胞の形態観察: 細胞の大きさ、形、構造を確認し、正常状態や異常状態を比較する。
細胞分裂と増殖の解析: 細胞周期の各段階や有糸分裂の進行を観察する。
細胞間相互作用の解析: 細胞同士の接着やシグナル伝達をリアルタイムで追跡する。
2. 医学・薬学研究
病理学的解析: がん細胞や疾患モデル細胞の特徴を調べ、診断や治療法の研究に活用する。
薬剤スクリーニング: 薬剤が細胞に与える影響を解析し、新しい治療薬の開発に役立てる。
毒性評価: 薬剤や化学物質が細胞に与える毒性を調べ、安全性評価を行う。
3. 生体分子・細胞機能解析
シグナル伝達経路の解析: 蛍光標識した分子を追跡し、細胞内での移動や相互作用を可視化する。
イオン動態の測定: カルシウムイメージングなどを用いて、細胞内のイオン濃度変化を記録する。
タンパク質局在の解析: GFP(緑色蛍光タンパク質)などを用いて、特定のタンパク質が細胞内でどこに存在するかを調べる。
4. 幹細胞研究と再生医療
細胞分化のモニタリング: 幹細胞が特定の細胞へ分化する過程を観察し、再生医療の研究に活用する。
細胞治療の品質管理: 患者に移植する細胞の品質を確認し、安全性を確保する。
5. バイオマテリアル・組織工学
細胞とバイオマテリアルの相互作用解析: 培養細胞が人工材料とどのように相互作用するかを調べ、組織工学に応用する。
オルガノイド・3D培養の解析: 3D培養モデルを用いた細胞組織の発達や応答を評価する。
このように、セルイメージングシステムは細胞の動態や機能を高精度で解析し、多様な研究分野で重要な役割を果たしています。
セルイメージングシステムを使用するメリット
セルイメージングシステムを使用するメリットは、細胞の詳細な観察や解析が可能になることで、研究や医療の質を向上させる点にあります。具体的なメリットを以下にまとめます。
1. 高解像度での細胞観察が可能
共焦点顕微鏡や超解像顕微鏡を用いることで、細胞内の構造や分子の局在をナノメートルレベルで観察できる。
高コントラストな画像取得により、細胞の形態や内部構造の詳細が明確になる。
2. ライブセルイメージングによるリアルタイム観察
生きた細胞の動態(細胞分裂、移動、シグナル伝達)をリアルタイムで記録できる。
低侵襲な観察が可能なため、細胞の生理機能を維持したまま長時間のモニタリングができる。
3. 蛍光標識技術を活用した分子レベルの解析
蛍光タンパク質(GFPなど)や蛍光プローブを用いることで、特定のタンパク質や分子の局在・動態を可視化できる。
カルシウムイメージングなどの技術で細胞内のイオン動態をリアルタイムに測定可能。
4. ハイスループット解析による効率的なデータ取得
自動化されたイメージングシステム(ハイスループットスクリーニング)が、数百〜数千の細胞を短時間で解析できる。
AIや機械学習を活用した画像解析により、大量のデータを迅速に処理・解析できる。
5. 非侵襲的な観察が可能
位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡を用いれば、染色なしで生細胞を観察できる。
細胞を傷つけることなく長期間の観察ができ、より生理的な状態での解析が可能。
6. 医薬品開発や病理診断への応用
薬剤スクリーニングにおいて、細胞レベルでの薬剤効果や毒性を評価できる。
がん細胞や疾患モデル細胞の解析により、診断や治療法の研究に貢献する。
7. 3D細胞培養やオルガノイド研究への適用
3D培養やオルガノイドを用いた組織レベルの研究が可能になり、より生体に近い環境での解析ができる。
組織工学や再生医療の研究において、細胞の成長や分化を詳細に評価できる。
このように、セルイメージングシステムは、細胞や組織の詳細な観察を可能にし、基礎研究から医療応用まで幅広く活用されています。
セルイメージングシステムが使用される分野
セルイメージングシステムは、生命科学や医学、薬学などの幅広い分野で活用されています。主な使用分野を以下にまとめます。
1. 生命科学・基礎研究
細胞生物学: 細胞の形態、分裂、移動、シグナル伝達などを観察・解析する。
分子生物学: DNA、RNA、タンパク質の局在や発現レベルを可視化し、遺伝子発現や転写調節の研究に活用する。
生理学・神経科学: ニューロンの活動やシナプス形成、イオンチャンネルの動態を観察する。
2. 医学・病理学
がん研究: がん細胞の増殖や転移のメカニズムを解析し、新たな治療法の開発に貢献する。
感染症研究: 細菌やウイルスの細胞内動態を可視化し、感染メカニズムを解明する。
病理診断: 患者組織サンプルの細胞レベルでの異常を検出し、疾患の診断に活用する。
3. 薬学・創薬研究
薬剤スクリーニング: ハイスループットイメージングを用いて、薬剤候補の効果や毒性を評価する。
薬理学・毒性学: 薬物が細胞に与える影響をリアルタイムで観察し、副作用のリスクを評価する。
4. 幹細胞研究・再生医療
細胞分化のモニタリング: 幹細胞が特定の細胞へ分化する過程を観察し、再生医療の研究に活用する。
細胞治療の品質管理: 移植用細胞の生存率や機能を確認し、安全性を確保する。
5. 組織工学・バイオマテリアル研究
オルガノイド研究: 3D培養技術と組み合わせ、人工的に作成したミニ臓器の成長や機能を解析する。
バイオマテリアル評価: 細胞と人工材料(足場材やナノ粒子)の相互作用を調べ、新しい医療材料の開発に貢献する。
6. 環境科学・食品科学
環境毒性評価: 汚染物質が細胞に与える影響を解析し、環境リスクを評価する。
食品安全研究: 食品由来の微生物の特性解析や品質管理に応用する。
このように、セルイメージングシステムは多様な分野で活用されており、基礎研究から臨床応用まで重要な役割を果たしています。
セルイメージングシステムのアプリケーション例
セルイメージングシステムは、さまざまな研究や医療分野で応用されています。以下に代表的なアプリケーション例を紹介します。
1. がん研究
がん細胞の形態・増殖解析: がん細胞の増殖速度や形態変化を追跡し、悪性度の評価に活用。
薬剤感受性試験: 抗がん剤ががん細胞に与える影響を観察し、薬剤の効果を評価。
細胞遊走・転移の解析: がん細胞の移動や浸潤能力をリアルタイムで観察し、転移のメカニズムを解明。
2. 神経科学
ニューロンの形態・シナプス形成の観察: 神経細胞の成長やネットワーク形成を可視化し、神経発達の研究に活用。
カルシウムイメージング: 神経活動をリアルタイムで測定し、神経回路の機能を解析。
アルツハイマー病・パーキンソン病研究: 病態モデル細胞を用いて、異常タンパク質の蓄積や神経変性の過程を観察。
3. 創薬・毒性試験
ハイスループットスクリーニング(HTS): 数千種類の化合物を短時間でスクリーニングし、新薬候補を探索。
細胞生存率・アポトーシス解析: 薬剤による細胞死(アポトーシス・ネクローシス)の評価。
オルガノイドを用いた薬剤評価: ミニ臓器を培養し、より生体に近い環境での薬剤効果を解析。
4. 幹細胞研究・再生医療
幹細胞の分化モニタリング: 幹細胞が神経細胞、心筋細胞、肝細胞などに分化する過程を追跡。
組織工学: 3D細胞培養技術と組み合わせ、人工臓器や移植用組織の開発に応用。
5. 免疫学・感染症研究
免疫細胞の動態解析: T細胞、B細胞、マクロファージなどの挙動を観察し、免疫応答を解析。
ウイルス感染の可視化: ウイルスが細胞に侵入し、増殖する過程をリアルタイムで観察。
細菌の生存・増殖解析: 細菌と宿主細胞の相互作用を解析し、新たな抗菌戦略を研究。
6. 環境科学・食品科学
環境汚染物質の影響評価: 化学物質やナノ粒子が細胞に与える影響を解析し、環境リスクを評価。
食品由来微生物の解析: 乳酸菌などの食品成分の機能を可視化し、発酵食品の品質管理に応用。
このように、セルイメージングシステムはがん研究から環境科学まで幅広い分野で活用されています。
セルイメージングシステムの仕組み
セルイメージングシステムの仕組みは、細胞の構造や機能を可視化し、解析するための高度な光学技術と画像処理技術の組み合わせによって成り立っています。以下の主要な構成要素とその動作原理について説明します。
1. 基本構成
セルイメージングシステムは、主に以下の要素で構成されています。
(1) 光源
LED光源: 一般的な蛍光顕微鏡で使用され、安定した光を提供。
レーザー光源: 共焦点顕微鏡や超解像顕微鏡で使用され、高精度なイメージングが可能。
白色光源(ハロゲンランプなど): 明視野・位相差顕微鏡で使用される。
(2) 顕微鏡光学系
明視野顕微鏡: 可視光を透過させて細胞の形態を観察。
蛍光顕微鏡: 特定の波長の光で蛍光標識した分子を励起し、特定のタンパク質や分子を可視化。
共焦点顕微鏡: ピンホールを使用して焦点面以外の光を除去し、クリアな3D画像を取得。
超解像顕微鏡: 光の回折限界を超えて、ナノスケールの構造を観察。
(3) カメラ・検出系
CCDカメラ: 高感度で広範囲を撮影できるが、読み出し速度は比較的遅い。
CMOSカメラ: 高速で撮影可能で、ライブセルイメージングに適している。
光電子増倍管(PMT): 共焦点顕微鏡で使用され、微弱な蛍光信号を高感度に検出。
(4) 画像解析ソフトウェア
細胞の形状、蛍光強度、動態を定量化。
AIや機械学習を活用し、大量のデータを自動解析。
3Dイメージング技術を用いた立体構造解析。
2. 動作原理
セルイメージングシステムは、以下の手順で細胞を観察・解析します。
(1) 細胞の準備
生細胞または固定細胞をプレパラートに配置し、培養液や試薬を添加。
蛍光染色(例:DAPI、GFP、Alexa Fluorなど)を行い、特定の細胞成分を可視化。
(2) 画像取得
光源が細胞を照射し、透過光や蛍光を発生。
対物レンズが光を集め、光学系を通してカメラに送信。
検出器(CCD/CMOS/PMT)が光信号を電気信号に変換し、デジタル画像として記録。
(3) 画像解析
取得した画像を処理し、細胞の形態・分布・蛍光強度を定量化。
タイムラプス撮影で細胞の動きや分裂を追跡し、動態解析を実施。
3Dイメージングでは、異なる焦点面の画像を統合し立体的な細胞構造を再構築。
セルイメージングシステムは、高度な光学技術、検出技術、画像解析技術を組み合わせて、細胞の動態や機能を詳細に可視化・解析するシステムです。これにより、生命科学・医学・薬学などの分野で重要な知見を得ることができます。
etaluma社 セルイメージングシステム Lumascope

エタルマのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。
そのコンセプトのデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。
LS820 は、現行のモデルにオートフォーカス機能が追加され、低コストでのオートフォーカス3色蛍光観察が可能になりました。ソフトウエアも新しくなり、より簡単に、高画質な画像データの取得ができます。
LS850 は、現行の自動XYステージのついたLS720全自動モデルの改良版です。新たな位相差技術により、位相差照明をコンパクトにし、オプションのタレットにより、4つの対物レンズを搭載することが可能となりました。
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