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蛍光セルイメージャー

  • Orange Science
  • 3月26日
  • 読了時間: 8分

蛍光セルイメージャーとは

蛍光セルイメージャーとは、蛍光顕微鏡の一種であり、蛍光標識された細胞や組織を撮像(イメージング)するための装置です。主に生物学・医学・薬学分野の研究で使用されます。


蛍光セルイメージャーの基本的な原理

  • 蛍光色素蛍光タンパク質を特定の細胞構造や分子に結合させ、蛍光を発するようにします。

  • 蛍光セルイメージャーは励起光(特定の波長の光)を照射し、蛍光を発する細胞を観察・撮像します。

  • 発せられる蛍光をカメラで撮影し、デジタル画像データとして記録します。


主な用途

  • 細胞増殖細胞死(アポトーシス)の観察

  • タンパク質の局在の可視化

  • 薬剤スクリーニング(薬剤の効果を細胞レベルで観察)

  • 細胞内シグナル伝達の解析

  • 遺伝子発現の観察


特徴

  • 短時間で複数の画像を取得できます。

  • 蛍光強度を定量化でき、細胞内の変化を数値データとして解析できます。

  • 複数チャンネル(複数の蛍光色素を同時に測定)に対応している機器もあります。




蛍光セルイメージャーを使用する目的


蛍光セルイメージャーを使用する主な目的は、生体内の特定の細胞、分子、または生理現象を可視化し、定量的なデータを取得することです。細胞や組織に対して蛍光標識(特定の構造に結合する蛍光色素や蛍光タンパク質)を行い、細胞内の動態や構造変化を観察することで、生命現象の理解や医薬品の効果評価を行います。

以下は、具体的な目的とその内容です。



① 細胞生存率・細胞増殖の評価

目的

  • 細胞が増殖しているのか、死滅しているのかを評価するため。

  • 抗がん剤や新薬候補化合物の細胞毒性試験(細胞を殺す力の評価)に使用されます。

方法

  • 生細胞死細胞を蛍光色素で染色。

  • 生存細胞の数や、増殖速度を定量化(数値化)できます。

  • 新薬候補ががん細胞に対して効果があるかどうかを調べる。

  • iPS細胞やES細胞から目的の細胞に分化させた場合、適切に増殖・分化しているかを確認する。



② 細胞内シグナル伝達の可視化

目的

  • 細胞内で起こるシグナル伝達(情報伝達経路)を可視化し、解析するため。

  • 例えば、ストレス応答免疫応答の経路を解析する際に用いられます。

方法

  • 特定のタンパク質分子に蛍光標識を行い、細胞内での移動や局在をリアルタイムで観察します。

  • 炎症反応を引き起こすシグナル経路(NF-κBなど)の活性化を可視化し、新薬の効果を検証する。

  • 細胞周期の進行(G1/S/G2/M期)の観察。



③ 細胞分化・形態変化の観察

目的

  • 細胞が分化(例えばiPS細胞から神経細胞へ分化するなど)する過程や、細胞形態の変化を観察・記録するため。

方法

  • 細胞膜や核を蛍光色素で染色し、細胞の形態を可視化します。

  • 分化マーカー(特定のタンパク質など)を蛍光標識し、分化過程を評価します。

  • 神経細胞や心筋細胞への分化過程の可視化。

  • がん細胞の浸潤や転移モデルを作成し、細胞の動きを観察する。



④ 細胞死(アポトーシスやネクローシス)の評価

目的

  • 細胞がプログラムされた細胞死(アポトーシス)を起こしているか、あるいは損傷死(ネクローシス)しているかを評価します。

  • 抗がん剤や化合物の効果評価に使用されます。

方法

  • 生細胞と死細胞を別々の蛍光色素で染色し、生存率細胞死の割合を解析します。

  • アポトーシスマーカー(カスパーゼ3など)の活性を可視化することもあります。

  • 抗がん剤が、がん細胞に対してアポトーシスを誘導しているか評価。

  • 放射線治療後の細胞死の評価。



⑤ 薬剤スクリーニング(ハイスループットスクリーニング:HTS)

目的

  • 数百~数千種類の化合物(薬剤候補)を同時に試験し、効果のある化合物を選別するため。

  • 製薬会社や研究所の創薬研究で非常に重要です。

方法

  • 細胞を複数のウェルプレート(96穴、384穴など)に播種。

  • 化合物を添加し、細胞の生存率や蛍光シグナルを一括で測定。

  • がん細胞の増殖抑制効果のある薬剤を発見する。

  • ウイルス感染を抑える薬剤を探索する。



⑥ タンパク質の局在や動態の観察

目的

  • 細胞内の特定のタンパク質が、どこに局在しているか(核・細胞膜・ミトコンドリアなど)を可視化します。

  • 蛋白質の発現量活性化の程度を測定します。

方法

  • 蛍光タンパク質(GFP、RFPなど)をターゲットタンパク質に結合させて、蛍光シグナルを検出。

  • 蛍光強度を定量解析することもあります。

  • がん抑制タンパク質(p53)の活性化を観察する。

  • 細胞分裂時の染色体の挙動を可視化する。




蛍光セルイメージャーを使用する利点


蛍光セルイメージャーを使用するメリットは、従来の光学顕微鏡や染色法では難しかった細胞や分子レベルの情報を可視化・定量化できることです。特に生細胞をリアルタイムで観察したり、複数のサンプルを同時に解析できる点が強みです。


1. 細胞の生存・増殖・死滅の評価を定量的に解析できる

2. ハイスループットスクリーニング(HTS)が可能

3. 生細胞の動態をリアルタイムで可視化できる

4. 特定のタンパク質や遺伝子発現を可視化できる

5. マルチカラー解析(複数の蛍光色素を同時測定)

6. データ解析・結果の標準化が容易


蛍光セルイメージャーを使う最大のメリットは、「細胞の生死・動態・シグナルを数値化・標準化」し、実験の信頼性と解析効率を劇的に向上させることです。




蛍光セルイメージャーが活用される研究分野


蛍光セルイメージャーは、生命科学研究医薬品開発を中心に、さまざまな研究分野で活用されています。主に細胞や組織の挙動を可視化・定量解析するため、疾患解明、創薬、再生医療など幅広い分野で使用されています。



1. 創薬研究(医薬品開発分野)

【研究の目的】

  • 新しい医薬品(化合物)の効果を細胞レベルで評価する。

  • 薬剤による細胞増殖抑制、細胞死、タンパク質発現変化を測定する。


2. がん研究

【研究の目的】

  • がん細胞の増殖・転移・浸潤を可視化し、治療ターゲットを探索する。

  • 抗がん剤の効果を評価する。


3. 再生医療・幹細胞研究

【研究の目的】

  • iPS細胞・ES細胞などの幹細胞から特定の細胞(神経細胞、心筋細胞など)への分化を評価する。

  • 幹細胞が正しく分化・増殖しているか可視化・解析する。


4. 免疫研究・感染症研究

【研究の目的】

  • ウイルス・細菌感染による細胞変化を可視化・定量解析する。

  • 免疫細胞(T細胞、マクロファージなど)の活性化や移動を観察する。


5. 神経科学・脳科学研究

【研究の目的】

  • 神経細胞(ニューロン)の分化・移動・シナプス形成を解析。

  • 神経変性疾患(アルツハイマー、パーキンソン病など)の解明。


蛍光セルイメージャーは、創薬がん研究再生医療免疫研究神経科学など、あらゆる生命科学研究で不可欠な装置です。




蛍光セルイメージャーのアプリケーション例


アプリケーション例①:細胞生存率(細胞増殖・細胞死)測定

細胞生存率とは、薬剤や化学物質による影響を受けた細胞が生存している割合を測定するアプリケーションです。 蛍光染色により「生細胞」と「死細胞」を明確に識別し、生存率を定量化します。


アプリケーション例②:細胞増殖率の定量評価

細胞増殖率(Cell proliferation assay)は、細胞の増殖速度を定量評価するアプリケーションです。 主に、がん研究、再生医療、創薬研究で使用されます。


アプリケーション例③:アポトーシス(細胞死)の検出

アポトーシス(Apoptosis)とは、細胞が自発的に死ぬ現象です。 抗がん剤や治療薬が細胞死を誘導する効果を測定できます。


アプリケーション例④:創薬スクリーニング(化合物スクリーニング)

数百種類の候補化合物を一度にスクリーニングし、最も効果のある化合物を探索するアプリケーションです。 ハイスループットスクリーニング(HTS)に対応した蛍光セルイメージャーが活用されます。


アプリケーション例⑤:神経細胞の分化・成熟解析

幹細胞から神経細胞への分化(分化誘導)を解析するアプリケーションです。 再生医療や神経疾患研究において神経分化の進行度を定量化できます。


アプリケーション例⑥:感染症研究(ウイルス・細菌感染解析)

細胞にウイルスや細菌を感染させ、感染細胞の増減を可視化・定量解析します。




Etaluma社 蛍光セルイメージャー Lumascope

Etalumaの蛍光セルイメージャー(Lumascopeシリーズ)は、コンパクトな倒立型蛍光顕微鏡です。インキュベーター内での使用が可能で、培養細胞のライブイメージングやタイムラプス撮影に適しています。高解像度の画像取得、オリンパス製レンズ対応、USB接続によるPCへの直接画像転送などの特長があります。モデルによって自動ステージやオートフォーカス機能も搭載されています。



 

etaluma社 ライブセルイメージングシステム Lumascope



 エタルマのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。


 そのコンセプトのデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。



LS820 は、現行のモデルにオートフォーカス機能が追加され、低コストでのオートフォーカス3色蛍光観察が可能になりました。ソフトウエアも新しくなり、より簡単に、高画質な画像データの取得ができます。


LS850 は、現行の自動XYステージのついたLS720全自動モデルの改良版です。新たな位相差技術により、位相差照明をコンパクトにし、オプションのタレットにより、4つの対物レンズを搭載することが可能となりました。 




各モデルの詳細は下記からご確認下さい。






 

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