イメージング装置とは
イメージング装置とは、物体や生体組織の構造・機能を視覚的に記録・解析するための機器の総称です。研究、医療、工業分野などで幅広く利用されます。
主な種類と用途
医療・生体イメージング
MRI(磁気共鳴画像装置):磁場と電波を用いて体内の断層画像を撮影
CT(コンピュータ断層撮影装置):X線を用いた断層画像撮影
PET(陽電子放射断層撮影):放射性薬剤を使った代謝・機能画像
超音波(エコー):高周波音波を利用したリアルタイム画像取得
顕微鏡イメージング(研究・診断用)
蛍光顕微鏡:特定の波長の光を使って蛍光標識した細胞・組織を観察
共焦点レーザー顕微鏡:高解像度で細胞内部の3D構造を取得
電子顕微鏡(SEM, TEM):ナノスケールの観察が可能
工業・材料イメージング
X線CT:工業製品の内部構造を非破壊で検査
赤外線カメラ:熱分布の可視化(建築、設備点検など)
蛍光X線分析装置:材料中の元素組成を特定
脳神経・行動研究用イメージング
光シート蛍光顕微鏡(LSFM):生体内での細胞の動態をリアルタイム観察
2光子顕微鏡:生きた脳組織の深部を観察可能
カルシウムイメージング:神経活動のリアルタイム可視化
顕微鏡イメージング装置・蛍光顕微鏡を使用する目的
蛍光顕微鏡は、特定の分子や細胞構造を可視化するために使用される顕微鏡イメージング装置です。蛍光標識した分子を励起し、発生する蛍光を観察することで、通常の光学顕微鏡では見えない詳細な情報を得ることができます。
蛍光顕微鏡を使用する主な目的
細胞・組織内の特定分子の可視化
抗体や蛍光タンパク質(GFPなど)を用いた標識により、特定のタンパク質や分子の分布を観察
細胞内小器官(ミトコンドリア、核、細胞膜など)の局在解析
細胞の動態観察(ライブセルイメージング)
生きた細胞内でのタンパク質の移動や細胞内シグナル伝達のリアルタイム観察
細胞分裂やアポトーシス(細胞死)の追跡
神経活動の解析
カルシウムイメージング(神経細胞の活動をカルシウムインジケーターで可視化)
蛍光標識したニューロンの形態観察
病理診断・医療研究
がん細胞の特定(免疫蛍光法を利用)
ウイルスや細菌の検出(蛍光プローブを用いた診断)
遺伝子発現の可視化
FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)によるDNA・RNAの局在解析
レポータージーン(GFP、mCherryなど)を使った遺伝子発現の追跡
薬剤スクリーニング・創薬研究
細胞内での薬剤の効果を観察
タンパク質-薬剤相互作用の解析
蛍光顕微鏡は、生物学・医学・薬学などの研究分野で広く使われ、特に分子レベルでの詳細な観察が必要な場合に有用です。
ライブセルイメージング装置を使用するメリット
蛍光顕微鏡、特にライブセルイメージングが可能な装置を使用するメリットは、生きた細胞をリアルタイムで観察できる点にあります。以下にその具体的なメリットを紹介します。
1. 生体内での細胞活動をリアルタイム観察できる
細胞の分裂、移動、シグナル伝達、形態変化などの動的なプロセスをリアルタイムで記録可能。
固定細胞では観察できない「細胞の生理的な変化」を直接追跡できる。
2. 生理的条件に近い環境で測定できる
CO₂濃度、温度、湿度を制御できる培養チャンバーを使用することで、生体内に近い環境で細胞を観察可能。
細胞にストレスをかけず、長時間の観察が可能。
3. ラベルフリーや非侵襲的な観察が可能
蛍光タンパク質(GFP, RFP など)を細胞内で発現させることで、外部からの化学染色なしに観察できる。
低毒性の蛍光色素を使用することで、細胞へのダメージを最小限に抑えながら観察可能。
4. 細胞間相互作用やシグナル伝達の解析ができる
カルシウムイメージングや**FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)**を利用して、神経細胞やシグナル伝達経路のリアルタイム解析が可能。
免疫細胞の動きや、がん細胞の浸潤メカニズムをライブ観察できる。
5. 長時間の経時的なデータ取得が可能
タイムラプスイメージングにより、数時間から数日間の細胞の変化を記録できる。
細胞分裂サイクルやアポトーシス(細胞死)の進行を定量的に解析可能。
6. 薬剤スクリーニングや創薬研究に応用できる
細胞応答のダイナミクスを解析し、薬剤の効果や毒性評価をリアルタイムで評価可能。
個々の細胞における薬剤応答の違いを解析し、個別化医療の研究にも貢献。
ライブセルイメージング装置を使うことで、細胞を固定せずに生理的な状態を保ちながらリアルタイムで詳細な観察が可能になります。特に細胞間相互作用、シグナル伝達、薬剤応答の研究において、非常に強力なツールです。
ライブセルイメージング装置が活用される分野
ライブセルイメージング装置は、生きた細胞をリアルタイムで観察・解析できるため、さまざまな研究分野で活用されています。以下に代表的な分野を紹介します。
1. 生物学・細胞生物学
細胞の動態解析
細胞分裂(有糸分裂・減数分裂の過程)
細胞死(アポトーシス・ネクローシス)の経時的観察
細胞内小器官(ミトコンドリア、ゴルジ体、エンドソーム)の移動・形態変化
遺伝子発現の可視化
レポータージーン(GFP, RFP など)を用いた遺伝子発現のライブ解析
FISH(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)によるRNAの動態解析
2. 神経科学・脳科学
神経細胞の活動解析
カルシウムイメージング(蛍光プローブを用いて神経活動をリアルタイム測定)
FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を用いたシグナル伝達解析
神経回路の形成と可塑性
神経細胞の成長、シナプス形成、可塑性の観察
脳オルガノイド(ミニ脳)の発達と機能解析
3. 免疫学・感染症研究
免疫細胞の動態解析
マクロファージやT細胞の遊走・貪食のリアルタイム観察
炎症や感染に対する免疫応答の解析
病原体と細胞の相互作用解析
ウイルスや細菌の感染過程のライブ観察
ワクチン開発・免疫応答解析への応用
4. がん研究
がん細胞の増殖・転移解析
がん細胞の浸潤・転移メカニズムの可視化
がん微小環境における細胞間相互作用の解析
抗がん剤の効果測定
がん細胞の生存率や形態変化をリアルタイム観察
耐性メカニズムの解析(薬剤耐性細胞の出現をタイムラプスで追跡)
5. 創薬・薬理学
薬剤スクリーニング
高速ライブセルイメージングを利用した薬剤応答の定量解析
個別細胞レベルでの薬剤効果評価(細胞の応答にばらつきがないか確認)
毒性評価(細胞毒性・ミトコンドリア機能)
薬剤が細胞に与える影響を時間経過とともに観察
オルガノイド(ミニ臓器)を用いた毒性試験
6. 再生医療・組織工学
幹細胞の分化・増殖解析
ES細胞やiPS細胞の分化過程のリアルタイム観察
組織形成や再生プロセスの解析
オルガノイド(ミニ臓器)の開発
心臓、腸、脳オルガノイドの発達過程をライブ観察
移植前の細胞の品質評価
7. 植物科学
植物細胞の成長・応答解析
葉緑体や根の成長のライブ観察
光応答・ホルモン応答の解析
植物と病原体の相互作用
病原菌感染時の細胞応答解析
植物免疫メカニズムの研究
ライブセルイメージング装置は、生命現象をリアルタイムで解析できる強力なツールとして、
基礎研究(細胞生物学・神経科学)
応用研究(がん研究・創薬・再生医療)
産業利用(薬剤スクリーニング・植物科学)
など、多岐にわたる分野で活用されています。
ライブセルイメージング装置のアプリケーション例
ライブセルイメージング装置のアプリケーション例をいくつか紹介します。これらのアプリケーションでは、生きた細胞をリアルタイムで観察することで、固定細胞では得られないダイナミックなデータを取得できます。
1. 細胞分裂のライブ観察
アプリケーション例:有糸分裂のダイナミクス解析
目的:細胞がどのように分裂し、DNAが正しく分配されるかを解析
手法:蛍光標識したヒストン(H2B-GFP)を発現させ、DNAの挙動をタイムラプス撮影
応用:がん研究(異常分裂の解析)、発生生物学
2. カルシウムイメージングによる神経活動の解析
アプリケーション例:ニューロンの活動可視化
目的:神経細胞の発火(活動電位)をリアルタイムで測定
手法:カルシウムプローブ(Fluo-4, GCaMPなど)を用い、神経細胞のCa²⁺濃度変化を測定
応用:神経科学(学習・記憶のメカニズム解析)、てんかん研究
3. 免疫細胞の遊走・貪食の観察
アプリケーション例:マクロファージの貪食活性解析
目的:マクロファージが異物(細菌やがん細胞)をどのように貪食するかを観察
手法:蛍光標識した細菌やアポトーシス細胞をマクロファージと共培養し、時間経過とともに取り込みを可視化
応用:感染症研究、免疫治療(がん免疫療法)
4. がん細胞の浸潤・転移メカニズム解析
アプリケーション例:がん細胞の浸潤・運動解析
目的:がん細胞がどのように周囲の組織へ浸潤し、転移するかを観察
手法:蛍光タンパク質(GFP, RFP)で標識したがん細胞を3Dマトリックス内で培養し、細胞の移動を記録
応用:抗がん剤の開発、転移抑制戦略の研究
5. 幹細胞の分化過程のリアルタイム解析
アプリケーション例:iPS細胞から神経細胞への分化追跡
目的:幹細胞が特定の細胞へどのように分化するかを観察
手法:蛍光標識した幹細胞を用い、神経特異的マーカー(TUJ1-GFPなど)の発現を時間経過とともに解析
応用:再生医療、神経変性疾患(アルツハイマー病・パーキンソン病)研究
6. 細胞内小器官のダイナミクス解析
アプリケーション例:ミトコンドリアの形態変化と機能評価
目的:ミトコンドリアの融合・分裂や細胞内輸送をリアルタイムで解析
手法:ミトコンドリア標識蛍光プローブ(MitoTracker)を用いて、細胞内の動態を撮影
応用:ミトコンドリア病、糖尿病、神経変性疾患研究
7. 創薬スクリーニング(ハイコンテントイメージング)
アプリケーション例:抗がん剤の細胞毒性評価
目的:新規薬剤の細胞毒性や作用メカニズムを評価
手法:がん細胞に薬剤を投与し、細胞の生存率・アポトーシス・ストレス応答をリアルタイムで観察
応用:新規抗がん剤の開発、薬剤耐性の研究
8. ウイルス感染過程のライブトラッキング
アプリケーション例:インフルエンザウイルスの細胞侵入機構解析
目的:ウイルスがどのように細胞へ侵入し、感染を広げるかを観察
手法:蛍光標識したウイルスを細胞に感染させ、ウイルスの移動・複製をライブセルイメージングで解析
応用:ワクチン開発、抗ウイルス薬のスクリーニング
9. オルガノイド(ミニ臓器)の発達過程観察
アプリケーション例:脳オルガノイドの神経回路形成解析
目的:脳オルガノイドの発達や神経ネットワークの形成を解析
手法:GFP標識した神経細胞を用い、軸索伸長やシナプス形成を観察
応用:自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病の研究
10. 植物の細胞応答解析
アプリケーション例:植物のストレス応答の解析
目的:植物が環境ストレス(光、塩分、温度変化)にどのように応答するかを解析
手法:カルシウムインジケーターを用い、ストレス刺激時の細胞内Ca²⁺変動を可視化
応用:作物改良、環境適応メカニズム研究
ライブセルイメージング装置は、細胞や組織の動的な生命現象をリアルタイムで解析できる強力なツールです。
基礎研究(細胞生物学・神経科学)
医療・創薬(がん研究・免疫学・感染症研究)
再生医療(幹細胞・オルガノイド)
植物科学(環境応答・成長解析)
など、さまざまな分野で活用されています。
etaluma社 ライブセルイメージングシステム Lumascope

エタルマのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。
そのコンセプトのデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。
LS820 は、現行のモデルにオートフォーカス機能が追加され、低コストでのオートフォーカス3色蛍光観察が可能になりました。ソフトウエアも新しくなり、より簡単に、高画質な画像データの取得ができます。
LS850 は、現行の自動XYステージのついたLS720全自動モデルの改良版です。新たな位相差技術により、位相差照明をコンパクトにし、オプションのタレットにより、4つの対物レンズを搭載することが可能となりました。
各モデルの詳細は下記からご確認下さい。