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iPS心筋細胞の収縮測定

iPS心筋細胞の収縮測定とは

iPS心筋細胞の収縮測定とは、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)から分化させた心筋細胞の拍動(収縮・弛緩)を定量的に評価する手法のことです。この測定は、細胞の成熟度、薬剤応答性、疾患モデルの評価などに用いられます。


主な測定方法

  1. 動画解析(画像処理)

    • 顕微鏡で細胞の収縮運動を撮影し、画像解析ソフトで変位や速度を算出する方法。

  2. 電気生理学的測定(MEA:多電極アレイ)

    • 培養したiPS心筋細胞の電気的活動を記録し、拍動のリズムや強度を測定する。

    • 用途:心拍リズム異常(不整脈)の評価など。

  3. トラクションフォース顕微鏡法(TFM)

    • 細胞が基質に及ぼす力(収縮力)を蛍光ビーズの移動を利用して測定する。

    • 応用:心筋細胞の収縮力評価、薬剤応答解析。

  4. 蛍光カルシウムイメージング

    • 細胞内のカルシウム濃度変化を蛍光指示薬(Fluo-4 など)で可視化し、収縮との相関を調べる。

    • 特徴:カルシウムイオン動態と収縮の関係を解析可能。


測定の応用

  • 創薬スクリーニング:新規心血管系薬剤の安全性評価

  • 疾患モデル:遺伝性心疾患(例:QT延長症候群)の研究

  • 再生医療:移植用心筋細胞の品質評価


どの方法を選択するかは、研究目的や解析精度の要求レベルによって異なります。


iPS心筋細胞の収縮測定をする目的

iPS心筋細胞の収縮測定の目的は、心筋細胞の機能評価や疾患研究、創薬開発、再生医療への応用など、多岐にわたります。具体的な目的は以下のとおりです。


1. 心筋細胞の機能評価

  • iPS細胞から分化誘導した心筋細胞の成熟度や機能を確認する。

  • 評価指標:収縮の振幅、頻度、速度、リズムの安定性。


2. 疾患研究・病態モデルの確立

  • 遺伝性心疾患のモデル作製(例:QT延長症候群、拡張型心筋症など)。

  • 心不全や不整脈の発症メカニズムの解析

  • 患者由来iPS細胞を用いて個別化医療の研究(疾患特異的な異常を解析)。


3. 創薬スクリーニングと毒性評価

  • 心毒性試験(例:薬剤が不整脈を誘発するかどうか)。

  • 新規治療薬の効果検証(例:収縮力を改善する薬剤の探索)。

  • 高スループットスクリーニングにより、多数の薬剤を迅速に評価可能。


4. 再生医療・細胞治療への応用

  • iPS由来心筋細胞を移植用の心筋細胞として利用するための品質評価

  • 生着後の機能予測(移植した細胞が適切に収縮し機能するか)。


5. バイオメカニクス・生体力学の研究

  • 心筋細胞が発生する収縮力を定量化し、心臓のポンプ機能に関する知見を得る。

  • 細胞外マトリックス(ECM)や基質の影響を解析し、細胞—基質相互作用を研究。


このように、iPS心筋細胞の収縮測定は、基礎研究から臨床応用まで幅広い目的で活用されています。


iPS心筋細胞の収縮測定をするメリット

iPS心筋細胞の収縮測定には、以下のようなメリットがあります。



1. 人由来の細胞を用いた解析が可能

  • 動物実験の代替として活用でき、ヒト心筋に近い生理学的反応を評価できる。

  • 患者由来iPS細胞を用いることで、個別化医療や疾患特異的な解析が可能。



2. 創薬・毒性試験の精度向上

  • 薬剤の安全性評価(心毒性試験)に活用できる。

    • 例:QT延長症候群などの不整脈リスクを、動物モデルよりもヒト心筋に近い環境で解析。

  • 高スループットスクリーニングが可能で、多数の薬剤を短期間で評価できる。

  • 既存の動物モデルでは評価が難しい、ヒト特有の心疾患メカニズムの解析が可能。



3. 疾患研究・病態解明に貢献

  • 遺伝性心疾患や後天性心疾患の病態モデルを作製し、発症メカニズムを解明できる。

  • 患者由来iPS細胞を用いることで、病気ごとの個別の治療法開発に役立つ。



4. 再生医療・細胞治療の品質評価

  • iPS由来心筋細胞の収縮測定を行うことで、移植前の細胞品質を確認できる。

  • 心筋細胞の成熟度や機能性を数値化し、再生医療の成功率向上に寄与。



5. 多様な測定手法による詳細な解析が可能

  • 動画解析・電気生理学・カルシウムイメージングなど、複数の測定方法を組み合わせることで、多角的な評価が可能。

  • 細胞の収縮力、リズム、カルシウム動態など、心筋機能の異常を詳細に調べることができる。



iPS心筋細胞の収縮測定は、基礎研究から臨床応用まで幅広く貢献し、特に創薬・疾患研究・再生医療の分野で大きなメリットがあります。特に、ヒト由来の細胞を使った解析が可能である点が、従来の動物実験や細胞培養系と比べた最大の強みです。



iPS心筋細胞の収縮測定が活用されている分野

iPS心筋細胞の収縮測定は、以下のような幅広い分野で活用されています。



1. 創薬・医薬品開発

  • 心毒性評価(安全性試験)

    • 新薬が心筋細胞にどのような影響を与えるかを評価。

    • 例:抗がん剤や抗不整脈薬の副作用によるQT延長症候群のリスクを検証。

  • 薬効評価

    • 新規の心不全治療薬や抗不整脈薬の有効性を確認

    • 例:収縮力を向上させる薬剤(β刺激薬など)の作用を解析。

  • 高スループットスクリーニング(HTS)

    • 多数の薬剤候補を短期間で迅速に評価するために利用。



2. 疾患研究・病態解明

  • 遺伝性心疾患モデルの解析

    • 遺伝子変異による先天性不整脈や心筋症の発症メカニズムを研究

    • 例:QT延長症候群、肥大型心筋症、拡張型心筋症。

  • 後天性心疾患の解析

    • 高血圧や糖尿病による心筋障害の研究。

    • 例:虚血性心疾患、心筋線維化の進行メカニズム。

  • パーソナライズド医療

    • 患者由来iPS細胞を用いた個別化治療の研究

    • 例:特定の患者に最適な薬剤の選定(プレシジョン・メディシン)。



3. 再生医療・細胞治療

  • iPS細胞由来心筋細胞の機能評価

    • 移植前の細胞が正常に収縮するかを測定し、安全性・有効性を確認。

  • 心筋再生療法の開発

    • 心筋梗塞や心不全患者への移植細胞の最適化。

    • 例:iPS心筋シートの開発。



4. バイオメカニクス・生体力学

  • 心筋細胞の収縮力を測定し、心臓のポンプ機能の研究

  • 基質の硬さが細胞の収縮に及ぼす影響を解析(組織工学への応用)。

  • 例:心筋組織のバイオプリンティング技術開発。



5. 医療機器・バイオセンサー開発

  • 多電極アレイ(MEA)やトラクションフォース顕微鏡の技術向上

  • オルガノイド(心臓オルガノイド)や心筋チップの開発

  • 例:ラボ・オン・チップ技術による心筋細胞のリアルタイムモニタリング。


iPS心筋細胞の収縮測定は、創薬・疾患研究・再生医療・バイオメカニクス・医療機器開発など、幅広い分野で活用されています。特に、ヒト由来の細胞を用いることで、より精度の高い評価が可能となり、個別化医療や次世代治療法の開発に大きく貢献しています。



iPS心筋細胞の収縮測定のアプリケーション例

iPS心筋細胞の収縮測定は、さまざまなアプリケーション(応用例)で活用されています。代表的な例を以下に紹介します。


1. 創薬・安全性試験(心毒性評価)

(1)医薬品の心毒性評価(QT延長症候群のリスク検証)

  • 新規医薬品(特に抗がん剤や抗不整脈薬)の副作用として、不整脈のリスクがあるかを評価。

  • アプリケーション例

    • iPS心筋細胞を用いた薬剤スクリーニング(高スループット解析)。

    • 電気生理学的測定(MEA)や蛍光カルシウムイメージングを活用して評価。

(2)新規心不全治療薬の評価

  • 心不全治療薬の候補化合物が、心筋収縮力を改善するかを評価。

  • アプリケーション例

    • β刺激薬やカルシウム感受性増強薬の作用を測定。

    • 収縮速度・収縮力の変化を解析し、治療効果を予測。



2. 遺伝性・後天性心疾患の研究

(3)遺伝性心疾患のモデル作製と病態解析

  • 遺伝子変異による心疾患モデルを作製し、疾患発症メカニズムを研究。

  • アプリケーション例

    • QT延長症候群(LQT)、肥大型心筋症、拡張型心筋症などの患者由来iPS心筋細胞を解析。

    • 異常な収縮パターンやリズム変化を測定し、疾患の特徴を明らかにする。

    • 実例:LQT患者のiPS心筋細胞でカルシウム動態異常を解析。

(4)後天性心疾患(心筋梗塞・糖尿病性心筋症)の解析

  • 高血圧・糖尿病・虚血による心筋障害の進行メカニズムを解析。

  • アプリケーション例

    • 低酸素環境下でのiPS心筋細胞の収縮変化を測定し、虚血性心疾患のモデルを作成。

    • 糖尿病モデルiPS心筋細胞で、グルコース代謝異常と収縮機能低下の関係を解析

    • 実例:糖尿病患者由来のiPS心筋細胞を用いた心筋症研究。



3. 再生医療・細胞治療の品質評価

(5)移植用iPS心筋細胞の品質管理

  • 再生医療で移植する心筋細胞の収縮機能を事前に評価。

  • アプリケーション例

    • 心筋細胞の成熟度評価(収縮周期・力学特性を測定)。

    • 細胞シート技術を用いた心筋パッチの収縮特性を解析。

    • 実例:「iPS心筋シート」開発プロジェクト。



4. バイオメカニクス・医療機器開発

(6)細胞レベルでの収縮力測定による心筋生体力学の研究

  • 心筋細胞が発生する収縮力を定量化し、心臓のポンプ機能を解析。

  • アプリケーション例

    • トラクションフォース顕微鏡(TFM)で細胞の収縮力を測定

    • 基質の硬さによる心筋細胞の収縮応答を解析し、組織工学に応用。

    • 実例:バイオプリンティング技術で心筋組織を再現する研究。

(7)オルガノイド・心臓チップ(Organ-on-a-Chip)の開発

  • iPS心筋細胞を用いた「心臓チップ」で、薬剤応答性をリアルタイム評価。

  • アプリケーション例

    • 微小流体デバイスにiPS心筋細胞を配置し、収縮挙動を測定

    • ラボ・オン・チップ技術を活用し、心筋機能をリアルタイム解析

    • 実例:心臓オルガノイドの開発。



iPS心筋細胞の収縮測定は、

  • 創薬・安全性試験(心毒性評価)

  • 心疾患の病態解析(遺伝性・後天性疾患)

  • 再生医療・移植細胞の品質評価

  • バイオメカニクス・医療機器開発

など、基礎研究から臨床応用まで幅広い分野で活用されています。


特に、ヒト由来の心筋細胞を用いた解析が可能である点が、従来の動物モデルや培養系と比較して大きな強みとなっています。


iPS心筋細胞の収縮測定に使用される装置

iPS心筋細胞の収縮測定に使用される装置には、光学的・電気生理学的・力学的測定法を用いるものがあり、目的に応じて選択されます。以下に、代表的な装置とその特徴を紹介します。


1. 光学式測定装置(動画解析・蛍光イメージング)

特徴:非侵襲的で、細胞の収縮運動をリアルタイムで測定できる

(1)位相差顕微鏡+画像解析ソフトウェア

  • 測定原理

    • 細胞の縁の動きをトラッキングし、収縮率・収縮速度を測定。

    • 100 ms 以下の時間分解能で高速測定が可能。

  • 用途

    • シングルセルや細胞シートの収縮測定

    • 薬剤スクリーニング・収縮リズムの解析

(2)蛍光イメージング(カルシウムトランジェント測定)

  • 測定原理

    • カルシウム指示薬(Fluo-4, Rhod-2)を用いた蛍光測定で、細胞内カルシウム変動を可視化。

    • カルシウムトランジェントと収縮運動を相関解析。

  • 用途

    • 創薬スクリーニング(心毒性評価)

    • 不整脈モデルの解析(カルシウム動態異常の検出)



2. 電気生理学的測定装置(MEA:多電極アレイ)

特徴:細胞の電気活動(活動電位)と収縮の関係を解析

(3)多電極アレイ(MEA, Multi-Electrode Array)システム

  • 測定原理

    • 細胞が発生する電場を記録し、収縮タイミングと活動電位を同時測定

    • 電気刺激を加え、収縮応答をリアルタイムに解析可能。

  • 用途

    • 不整脈リスクの評価(QT延長症候群の解析)

    • 薬剤スクリーニング・イオンチャネル異常の解析



3. 力学的測定装置(トラクションフォース・バイオMEMS)

特徴:心筋細胞が発生する収縮力を定量化

(4)トラクションフォース顕微鏡(TFM, Traction Force Microscopy)

  • 測定原理

    • 細胞の収縮時に生じる基質変形を測定し、力学的ストレスを算出

    • 弾性ハイドロゲルやマイクロピラーを利用して収縮力を測定。

  • 用途

    • 細胞の成熟度評価・再生医療の品質管理

    • 基質の硬さが収縮に与える影響を解析(バイオメカニクス)

(5)バイオMEMS(MicroElectroMechanical Systems)による収縮測定

  • 測定原理

    • 微小流体チップ上にiPS心筋細胞を培養し、収縮挙動をリアルタイム測定

    • 3D細胞シートやオルガノイドでの収縮評価が可能。

  • 用途

    • 心臓オルガノイドの開発・心筋パッチの品質評価

    • 再生医療や医療機器開発の前臨床評価



4. 3D組織レベルでの測定装置

特徴:細胞シートやオルガノイドの収縮挙動を解析

(6)心筋シートやオルガノイドの力学測定(Atomic Force Microscopy, AFM)

  • 測定原理

    • 原子間力顕微鏡(AFM)を用いて細胞の弾性率を測定し、収縮力を評価

    • 3D心筋組織のストレッチ応答を測定。

  • 用途

    • iPS心筋パッチの品質管理・再生医療の前臨床評価

    • バイオプリンティング技術と組み合わせた心筋組織研究


iPS心筋細胞の収縮測定には、さまざまな技術が組み合わされており、目的に応じて最適な装置が選択されます。それぞれの装置は創薬・安全性試験・再生医療・バイオメカニクスなどの分野で活用されており、iPS心筋細胞の特性を詳細に評価するのに役立っています。



IonOptix CytoMotion・MyoCyteシステム


IonOptix社のCytoMotionシステムおよびMyoCyteシステムは、iPS心筋細胞の研究に活用できる装置で、それぞれ異なる用途に活用できます。以下に、それぞれのシステムの特徴と活用方法を解説します。



1. CytoMotionシステムの特徴と活用方法



(1)特徴

  • ライブセルで非侵襲的に収縮測定が可能

  • 位相差顕微鏡+AI画像解析により、高精度な収縮データ取得

  • 96ウェルプレート対応で、高スループット測定が可能

  • 薬剤添加後のリアルタイム測定が可能


(2)活用方法

① 創薬・安全性試験(ハイスループットスクリーニング)

  • 心毒性評価(不整脈誘発リスクの検証)

  • 薬剤による収縮パターン変化(収縮率・リズム異常)を定量化

  • 例:抗がん剤や抗不整脈薬が心筋細胞に与える影響を解析

② iPS心筋細胞の成熟度評価

  • iPS心筋細胞の分化段階に応じた収縮特性の変化を測定

  • 例:異なる培養条件で成熟度がどのように変わるか解析

③ 心筋疾患モデルの解析

  • 遺伝性心筋症(肥大型・拡張型心筋症)iPS細胞由来の収縮異常を解析

  • 例:患者由来iPS心筋細胞の収縮異常を検出し、疾患メカニズムを研究






2. MyoCyteシステムの特徴と活用方法


(1)特徴

  • 単一心筋細胞(シングルセル)の高精度収縮測定

  • 細胞の収縮・再伸展をリアルタイムで定量化

  • 電気刺激を加えながら、収縮応答を測定可能

  • カルシウムトランジェント測定と組み合わせた解析が可能

(2)活用方法

① 単一心筋細胞の収縮特性解析

  • iPS心筋細胞の収縮速度・最大収縮幅・弛緩速度を高精度に測定

  • 例:異なる培養条件や遺伝子変異による影響を詳細に解析

② カルシウムトランジェントとの相関解析

  • 蛍光指示薬を用いたカルシウム動態と収縮挙動のリアルタイム測定

  • 例:不整脈疾患モデルで、カルシウム動態異常が収縮にどう影響するか解析

③ 電気刺激応答の評価

  • 一定のペーシング条件下で、iPS心筋細胞の応答性を評価

  • 例:ペーシング周波数を変えたときの収縮応答を測定し、興奮収縮連関を解析







CytoMotionとMyoCyteシステムを活用することで、iPS心筋細胞研究 を加速できます。



 

ー その他の製品紹介 ー

C-Pace/ 筋細胞電気刺激培養装置


 イオンオプティクス社のシーペースシステム(C-Pace EM)は、筋細胞へ電気刺激を与えながら培養することができるシステムです。4~24wellまでの専用電極(C-Dish)により、同時に大量の細胞へ電気刺激が可能で、バイポーラ波形の刺激により、電気分解を防ぎ、長時間の刺激培養が可能です。


 設置も非常に簡単で、汎用培養プレート(※使用可能なリストはこちら)もそのままお使い頂けますので、装置に電源を接続するだけで、すぐにご使用頂けます!





MyoStretcherシステム


MyoStretcher(マイオ・ストレッチャー)システムは、画期的な光学フォーストランスデューサーによって、心筋細胞の力を測定することができるシステムです。特に心筋細胞の測定用に設計されており、この分野では、現在最も精度が高いシステムと言えます。







 

他の取り扱い装置は弊社のHPをご覧ください。 お問い合わせは、下のボタンからお願いします。






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