窒素蒸発器

2024年6月1日

窒素蒸発器とは

研究で使用される窒素蒸発器（窒素エバポレーター）は、試料の溶媒を効率的に除去するための装置です。特に、化学や生物学の研究室でのサンプル調製に広く利用されます。

窒素蒸発器（窒素エバポレーター）の機能と用途

機能

溶媒の除去：窒素ガスを使用して試料中の溶媒を迅速に蒸発させます。窒素ガスは不活性であり、化学的反応を引き起こさないため、試料の成分に影響を与えることなく溶媒を除去できます。

加熱と気流の組み合わせ：多くの窒素エバポレーターは、加熱と窒素ガスの吹き付けを組み合わせて効率的に溶媒を蒸発させます。温度とガスフローを調節することで、蒸発速度を最適化できます。

操作手順

試料をバイアルやチューブに入れ、エバポレーターにセットします。
窒素ガスの吹き付け口を試料に向け、適切な温度とガスフローを設定します。
ガスを流し始めると、溶媒が蒸発し、試料が濃縮されます。
蒸発が完了すると、試料は濃縮された状態となり、次の分析ステップに進められます。

研究用の窒素エバポレーターは、溶媒の迅速かつ効率的な除去を可能にし、試料の調製や分析の精度向上に寄与する重要な装置です。

窒素蒸発器の使用目的

窒素蒸発器を使用する主な目的は、試料から溶媒を効率的に除去することです。具体的には、以下のような目的があります。

主な目的

試料の濃縮

溶媒を蒸発させることで、試料中の成分を濃縮します。これは、微量の成分を分析する前に、成分の濃度を高めるために重要です。

溶媒の完全除去

試料調製の過程で、溶媒が最終製品に残らないようにするためです。特に、次のステップで溶媒が分析や反応を妨げる可能性がある場合に重要です。

高感度分析の準備

分析装置（例えば、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー）の感度を高めるために、試料から溶媒を除去し、目的の成分を検出しやすくします。

サンプルの保存

長期間保存する際に溶媒を除去することで、試料の安定性を向上させます。乾燥した試料は、劣化しにくくなります。

窒素蒸発器は、研究や分析の現場で溶媒を効率的に除去し、試料の濃縮や純度向上を図るために不可欠な装置です。

窒素蒸発器のメリット

窒素蒸発器を使用することには多くのメリットがあります。

迅速な溶媒蒸発

窒素ガスを利用することで、溶媒を迅速に蒸発させることができます。これにより、サンプル調製の時間を大幅に短縮できます。

高い再現性と精度

温度やガスフローの設定を正確に制御できるため、再現性の高い結果が得られます。これにより、分析結果の精度も向上します。

サンプルの安全性

窒素は不活性ガスであり、酸化や化学反応を引き起こすリスクがありません。これにより、サンプルの成分が変化することなく、溶媒を除去できます。

熱感受性サンプルへの適応

窒素蒸発器は低温でも効率的に溶媒を除去できるため、熱に敏感なサンプルを安全に処理できます。これにより、サンプルの分解や劣化を防ぐことができます。

効率的な溶媒除去

高いガスフローを使用することで、溶媒の除去が非常に効率的に行われます。これにより、濃縮された試料を迅速に得ることができます。

操作の簡便さ

窒素蒸発器は通常、使いやすい設計がされており、特別な技術や経験がなくても操作できます。これにより、研究者は迅速に試料調製を行うことができます。

コスト効果

窒素ガスは比較的安価であり、また窒素蒸発器自体も多くの研究施設で標準的な設備として導入されています。これにより、長期的なコスト削減が期待できます。

環境への配慮

窒素は大気中に存在する天然のガスであり、環境への影響が少ないです。これにより、持続可能な研究活動に貢献できます。

多様な用途

窒素蒸発器は、化学分析、生化学、環境サンプルの処理、医薬品の開発など、様々な分野で利用可能です。これにより、広範な研究活動をサポートします。

窒素蒸発器は、迅速かつ効率的に溶媒を除去し、サンプルを安全に濃縮するための重要な装置です。これにより、研究の効率と精度が向上し、多くの研究分野で不可欠なツールとして利用されています。

窒素蒸発器の利用例と使用分野

窒素蒸発器は、さまざまな分野で使用されており、特に試料中の溶媒を迅速かつ効率的に除去する必要がある場合に利用されます。

窒素蒸発器の利用例

サンプル濃縮：例えば、液体クロマトグラフィー（LC）やガスクロマトグラフィー（GC）などの分析前にサンプルを濃縮するために使用されます。

サンプル調製：生化学や分子生物学の実験で、DNA、RNA、タンパク質などの試料から溶媒を除去する際に使用されます。

新薬開発：製薬会社では、合成後の化合物から溶媒を除去するために窒素蒸発器を使用し、その後の薬理活性評価を行います。

高純度分析：溶媒を完全に除去することで、分析の精度を向上させることができます。

環境サンプルの分析：水や土壌などの環境サンプルから溶媒を除去し、汚染物質の濃縮と検出を容易にします。

使用分野

化学分析

クロマトグラフィー：液体クロマトグラフィー（LC）やガスクロマトグラフィー（GC）の前処理として、サンプルを濃縮し、溶媒を除去します。

質量分析：質量分析（MS）においても、試料の濃縮と溶媒の除去は重要であり、窒素蒸発器が利用されます。

生化学および分子生物学

核酸抽出：DNAやRNAの抽出後、溶媒を除去して濃縮します

タンパク質研究：タンパク質の抽出や精製後の濃縮に使用されます。

医薬品の研究開発

合成化合物の精製：新薬の開発過程で合成された化合物から溶媒を除去し、純粋な化合物を得るために使用されます。

バイオアッセイ：試料の調製や前処理として、溶媒の除去が必要な場合に利用されます。

環境科学

水質検査：水サンプルから有機溶媒を除去し、汚染物質を濃縮して検出します。

土壌分析：土壌サンプルから抽出された溶媒を除去し、分析のために試料を濃縮します。

食品および飲料の分析

残留農薬検査：食品サンプルから抽出した溶媒を除去し、残留農薬の検出を行います。

成分分析：食品や飲料中の成分を分析するために、試料の濃縮が必要な場合に使用されます

法医学および毒物学

血液や尿の分析：法医学的な調査において、血液や尿などの生体試料から溶媒を除去し、薬物や毒物の検出を行います。

残留物の検出：犯罪現場から収集された残留物や試料の溶媒を除去し、分析のために濃縮します。

窒素蒸発器は、試料中の溶媒を迅速かつ効率的に除去するため、多くの分野で重要な役割を果たしています。これにより、試料の濃縮、純度向上、分析精度の向上が実現し、様々な研究や産業プロセスで欠かせないツールとなっています。

窒素蒸発器のアプリケーション例

窒素蒸発器のアプリケーション例は数多くあり、さまざまな研究分野や産業で活用されています。

液体クロマトグラフィー前処理

概要：液体クロマトグラフィー（LC）分析前に試料を濃縮し、溶媒を除去する。

用途：試料の感度を高めるため、例えば環境水中の微量汚染物質の検出に使用されます。

ガスクロマトグラフィー前処理

概要：ガスクロマトグラフィー（GC）分析のために、試料中の有機溶媒を除去し、目的成分を濃縮する。

用途：食品や飲料中の揮発性有機化合物（VOCs）の分析に使用されます。

DNA、RNAの抽出と濃縮

概要：抽出された核酸からエタノールなどの溶媒を除去し、濃縮する。

用途：次世代シーケンシング（NGS）やPCRの前処理として使用されます。

タンパク質の精製と濃縮

概要：精製後のタンパク質試料から溶媒を除去し、濃縮する。

用途：質量分析（MS）やタンパク質構造解析のための前処理として使用されます。

環境サンプルの前処理

概要：水や土壌から抽出した有機溶媒を除去し、汚染物質を濃縮する。

用途：環境モニタリングや汚染調査における微量分析に使用されます。

残留農薬の分析

概要：食品サンプルから抽出した溶媒を除去し、残留農薬を濃縮する。

用途：食品安全検査で使用され、特に農薬の規制基準に適合するかどうかを確認するために利用されます。

法医学的分析

概要：血液や尿などの生体試料から溶媒を除去し、薬物や毒物を濃縮する。

用途：法医学調査や薬物乱用検査に使用されます。

新薬開発における化合物精製

概要：合成された化合物から溶媒を除去し、純粋な化合物を得る。

用途：製薬研究での薬理試験や毒性試験の前処理として使用されます。

窒素蒸発器は、試料の溶媒を効率的に除去し、濃縮することで、様々な分析や研究において重要な役割を果たしています。これにより、試料の分析精度が向上し、研究の効率化が図られます。

大容量窒素蒸発器

大容量の窒素蒸発器は、同時に複数のサンプルを処理できるように設計されており、大量の溶媒を迅速に蒸発させることが可能です。これらの装置は、主に製薬業界、化学分析、環境サンプルの処理など、大量の試料を効率的に処理する必要がある場合に使用されます。

大容量窒素蒸発器N-EVAPシリーズ（Organomation社）

N-EVAPシリーズの窒素蒸発器は、経済的で信頼性の高い装置であり、調整可能なガスフローと加熱ブロックを搭載しています。この装置は、一般的な研究用途から食品分析、環境サンプルの処理まで幅広く対応でき、最大で100本の試料チューブを同時に処理できるモデルもあります。

大容量窒素蒸発器の利点

高スループット

同時に多数のサンプルを処理できるため、作業効率が大幅に向上します。これにより、大量の試料を迅速に処理することが可能です。

精密な制御

温度やガスフローを精密に制御できるため、試料の状態に応じた最適な条件で処理が行えます。これにより、再現性の高い結果が得られます。

多用途性

さまざまな試料タイプや用途に対応できるため、研究室や産業プロセスでの汎用性が高いです。複数の用途に対して一台で対応可能な装置が多くあります。

自動化

多くの大容量窒素蒸発器は自動化機能を備えており、手作業を減らして作業者の負担を軽減し、エラーを減らすことができます。

大容量窒素蒸発器選定のポイント

大容量の窒素蒸発器を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。まず、処理容量が必要とするサンプル数に対応できるかどうかを確認します。次に、温度、ガスフロー、真空レベルなどの制御が精密にできる制御機能があるかをチェックします。また、自分の研究や分析の用途に適しているかどうか、用途適合性も重要です。さらに、自動化された操作が可能かどうか、自動化機能の有無も考慮に入れる必要があります。最後に、予算に対してコストパフォーマンスが高いかどうかを評価します。これらのポイントを踏まえて、具体的な用途や必要な処理量に応じた窒素蒸発器を選ぶことが重要です。

Organomation - 窒素エバポレーター

オレンジサイエンスでは世界的に有名なOrganomation社の窒素エバポレーターを取り扱っています。Organomation社は、窒素ブローダウン技術を中心とした窒素エバポレーター・窒素ブローダウン蒸発装置を専門としている機器開発メーカーです。1959年に設立され、60年以上にわたり、世界中の研究・試験機関向けに窒素エバポレーター・窒素蒸発装置を提供してきました。Organomation社の高品質な窒素エバポレーター装置は、世界中で信頼性が高く、メンテナンスの手間がかからない実験装置であると高く評価されています。また、耐用年数が長いため、今日の多忙な研究室にとって、非常に費用対効果の高いソリューションとなっています。

窒素エバポレーターとは、分析用サンプルの前処理によく使用される実験装置です。環境試験、農業、食品・飲料、医薬、品質保証、科学捜査、オイル・グリースなど、様々な業界で使用されており、質量分析を行う前にサンプルを乾燥・濃縮するために使用されます。試料は窒素エバポレーターに充填され、窒素ブローダウンが、時には熱と併用されながら、試料の水分を除去するために使用されます。

Organomationの卓上型窒素エバポレーターは、窒素ガスの穏やかな流れをサンプルに直接供給します。一定のガス流は、蒸気が飽和した空気層を押し流し、蒸気が液体に戻るのを防ぎます。これにより、過剰な溶媒蒸気の量が減少し、圧力が下がり、サンプルがより速く蒸発することが可能になります。これは、少量、揮発性、半揮発性のサンプルには特に重要です。

窒素ブローダウンは消耗品を必要としない方法であり、サンプルに非常に優しく、代替オプションと比較して非常に手頃な価格です。

Organomationは、N-EVAPライン、MULTIVAPライン、MICROVAPラインの3つの主要製品ラインを通じて、少量サンプル用の窒素ブローダウン蒸発器の多くのバリエーションを提供しています。

N-EVAP

N-EVAPは調整可能な窒素ブローダウン技術を利用しており、窒素ガスを無駄にすることなく、サンプルへの窒素フローを完全にコントロールできます。柔軟性がN-EVAPの特徴です。他の少量サンプルエバポレーターと異なり、N-EVAPは、別々のヒートブロックを必要とせず、一度に数種類のバイアルやチューブを保持することができます。非加熱モデルだけでなく、ウォーターバスまたはドライビーズ付きの加熱モデルもあります。

N-EVAP

MULTIVAP

MULTIVAPは、一度に多数のサンプルのバッチ濃縮に一貫性を提供します。チューブは、加熱された特注アルミブロックまたはウォーターバスに設置されます。窒素分配マニホールドはユニットとして昇降し、1回の動作で全サンプルへの蒸発を開始または停止します。

MULTIVAP

MICROVAP

MICROVAPは、96ウェルマイクロプレートや小ロット用に設計されたコンパクトな装置で、ライフサイエンスや製薬業界のお客様によく使用されています。サンプルは、サンプルチューブに合うように特注加工された加熱アルミニウムブロックに収まります。常温での蒸発用に、加熱なしのモデルもあります。

MICROVAP

窒素ブローダウン蒸発器は、少量のサンプルや大量のサンプルの蒸発、複数のサンプル前処理方法の同時実行を可能にすることで、ラボに利益をもたらします。

動画

時間計算・溶媒除去方法判別ツール

Organomation社の日本語Webサイトでは溶媒除去に関する時間計算ツール・溶媒除去方法判別ツールを用意しています。手作業で処理していた濃縮除去の時間を濃縮器を使うことでどれだけ時間短縮できるか、ラボに必要な溶媒除去方法、濃縮器が必要か、など、いくつかの質問に答えるだけですぐに回答が得られます。ぜひご活用ください。

溶媒除去に要する時間計算

どの溶媒除去方法が適切か

濃縮器導入の判断

Organomationの窒素エバポレーターの違い

Organomation社は、窒素ブローダウン技術を中心としたラボ用窒素エバポレーターのメーカーです。N-EVAP、MICROVAP、MULTIVAPの3つの主要なブローダウン製品ラインがあります。各製品ラインは、容量、制御、機能が異なるため、さまざまな用途に対応できるように設計されています。ここでは、各エバポレーターの主な違いを説明し、どのエバポレーターがお客様のラボに最適かを判断できるようにします。