サルコメア
- Orange Science
- 3月25日
- 読了時間: 7分
サルコメアとは
サルコメア(sarcomere)とは、筋原線維(筋細胞の収縮に関与する繊維状の構造)の基本的な機能単位です。主に骨格筋や心筋に存在し、筋収縮のメカニズムにおいて重要な役割を果たします。
サルコメアの構造
サルコメアは、Z線(Zディスク)と呼ばれる境界構造に挟まれた領域で構成されます。内部には以下の主要なタンパク質フィラメントが含まれています。
アクチンフィラメント(細いフィラメント)
Z線に結合し、サルコメアの両端から中央に向かって伸びています。
ミオシンフィラメント(太いフィラメント)
中央のM線(Mディスク)を中心に配置され、アクチンフィラメントと相互作用します。
収縮機構
筋収縮時には、ミオシンフィラメントの頭部がアクチンフィラメントに結合し、「滑り込み説(Sliding Filament Theory)」に基づいてフィラメントが互いに滑ることで収縮が起こります。
サルコメアの機能
筋肉の収縮と弛緩を調節する基本単位。
ATPをエネルギー源としてミオシンがアクチンを引き寄せることで、サルコメアが短縮し筋収縮が起こる。
トロポニンやトロポミオシンといった調節タンパク質がカルシウムイオンと相互作用し、収縮の調節を行う。
関連する病気・異常
サルコメアの異常は、筋ジストロフィー、拡張型心筋症、肥大型心筋症などの疾患に関連しています。
サルコメア研究の目的
サルコメア研究の目的は、筋収縮のメカニズムを解明し、筋肉や心筋の疾患の理解と治療法の開発につなげることです。具体的には以下のような目的が挙げられます。
1. 筋収縮の基本メカニズムの解明
サルコメアは筋収縮の基本単位であり、その構造や機能を詳細に研究することで、収縮の分子メカニズムやエネルギー利用の仕組みを明らかにします。 🔹 研究例:アクチン・ミオシンの相互作用、ATPの利用、カルシウムイオンによる制御機構
2. 筋疾患の理解と治療法の開発
サルコメアの異常は、さまざまな筋疾患や心疾患と関連しています。これらの疾患の病態を明らかにし、新たな治療法や創薬につなげることが研究の大きな目的です。
▶ 関連疾患
筋ジストロフィー(遺伝的な筋萎縮)
肥大型心筋症・拡張型心筋症(サルコメア遺伝子の変異による心不全)
サルコペニア(加齢による筋力低下)
🔹 研究例
サルコメアタンパク質(トロポニン、トロポミオシン、ミオシン結合タンパク質など)の遺伝子変異の影響
サルコメアを標的とした新しい薬剤(ミオシンアクチベーター、ミオシン阻害薬)の開発
3. 再生医療や組織工学への応用
サルコメアの構造と機能を深く理解することで、筋肉や心筋を人工的に再生する技術の開発が進んでいます。
🔹 研究例
iPS細胞を用いた心筋細胞の作製と移植
3Dバイオプリンティング技術による人工筋肉・心筋の開発
4. スポーツ科学・運動生理学への応用
サルコメアの機能を最適化することで、筋力増強や疲労回復のメカニズムを解明し、スポーツパフォーマンス向上につなげる研究も行われています。
🔹 研究例
筋トレや栄養摂取がサルコメア形成に与える影響
筋疲労の原因と回復メカニズム
サルコメア研究は、基礎科学(筋収縮メカニズムの解明)と応用科学(疾患治療、再生医療、スポーツ科学)の両方に貢献する重要な分野です。特に、心筋症や筋疾患に関する創薬・治療研究は、今後さらに発展が期待されています。
サルコメア測定
サルコメア測定とは?
サルコメア測定とは、筋肉や心筋の収縮単位であるサルコメアの長さ、構造、機能を評価するための測定技術です。サルコメアの長さや動態を測定することで、筋収縮のメカニズム、疾患の影響、トレーニングや治療の効果を解析することができます。
サルコメア測定の目的
筋収縮メカニズムの研究
筋疾患や心筋症の診断と研究
運動・リハビリテーション効果の評価
創薬研究(ミオシン阻害薬や活性化薬の効果検証)
測定結果の活用
筋疾患(筋ジストロフィー、心筋症)の診断・研究 🔹 サルコメア長が短縮・異常な構造を示す場合、疾患の指標となる
スポーツ科学・リハビリテーション 🔹 筋トレやリハビリでサルコメア長が変化するかを測定
創薬研究 🔹 サルコメア関連薬剤(例:ミオシンモジュレーター)の効果を検証
サルコメア測定は、筋肉の収縮メカニズムの研究や疾患診断、創薬において重要な役割を果たします。
サルコメア測定が用いられる研究分野
サルコメア測定は、筋収縮や筋疾患の研究、スポーツ科学、再生医療など、多くの研究分野で活用されています。以下、代表的な分野を紹介します。
1. 筋生理学・細胞生物学
🔹 研究目的
筋肉の収縮メカニズムの解明
サルコメアの長さや構造変化の解析
筋肉の発達や老化に伴うサルコメアの変化
2. 筋疾患・心筋症の研究
🔹 研究目的
筋ジストロフィー、拡張型/肥大型心筋症、ミオパチーなどの疾患におけるサルコメア異常を解析
筋肉や心筋の収縮機能の評価
創薬ターゲットの特定(ミオシン活性化薬、カルシウム感受性薬など)
3. 再生医療・組織工学
🔹 研究目的
iPS細胞・ES細胞から作製した心筋・骨格筋組織の機能評価
筋肉・心筋の再生医療に向けたサルコメア形成の確認
バイオ人工筋肉の機能解析
4. スポーツ科学・運動生理学
🔹 研究目的
トレーニングがサルコメア構造や長さに与える影響の解析
筋疲労・回復メカニズムの解明
スポーツパフォーマンス向上のための筋適応研究
5. 老化・サルコペニア研究
🔹 研究目的
加齢によるサルコメアの変化と筋萎縮(サルコペニア)の関連解析
老化に伴う筋収縮機能の低下のメカニズム解明
介護・リハビリ分野での筋力低下予防策の開発
6. 創薬・薬理学
🔹 研究目的
サルコメアタンパク質(ミオシン、アクチン、トロポニン)の変異が薬物反応に与える影響の解析
ミオシンアクチベーターや阻害薬の効果評価
筋弛緩剤や強心薬の開発
サルコメア測定は、筋肉・心筋の機能解析を目的に、以下の分野で活用されています。
筋生理学・細胞生物学(基礎研究)
筋疾患・心筋症の研究(病態解明・診断・治療)
再生医療・組織工学(iPS細胞・人工筋肉)
スポーツ科学・運動生理学(トレーニング・筋適応)
老化・サルコペニア研究(高齢者の筋機能低下)
創薬・薬理学(新薬開発・薬剤評価)
サルコメア測定技術の進歩により、疾患診断や治療、トレーニング効果の評価、再生医療の発展など、さまざまな応用が広がっています。
心筋のサルコメア測定のアプリケーション例
心筋のサルコメア測定は、心疾患の研究や診断、創薬、再生医療、機能評価などに広く応用されています。
心筋症(HCM, DCM)の診断と研究(遺伝子変異の影響解析)
創薬・薬効評価(心不全治療薬・ミオシンモジュレーターの開発)
iPS細胞由来心筋の成熟度評価(再生医療・人工心筋)
心筋のメカニカルストレス応答解析(高血圧・運動負荷試験)
心筋梗塞後の回復評価(治療・リハビリ効果の定量解析)
心筋のサルコメア測定技術は、心疾患の診断や新規治療法の開発、再生医療の進展に大きく貢献しています。
IonOptix社の MyoCyteシステム を用いた心筋のサルコメア測定
IonOptix社の MyoCyteステム は、単一心筋細胞の収縮・弛緩時のサルコメア長変化を測定 するための装置です。心筋の収縮機能や薬理応答の評価に活用できます。MyoCytシステムは、心筋細胞のサルコメア測定が可能な高精度な解析装置であり、心筋症の研究・創薬・iPSC心筋機能評価 において非常に有用です。

ー その他の製品紹介 ー
CytoMotion
CytoMotionは、iPS心筋細胞などの最大収縮速度や最大収縮速度までの時間、最大弛緩速度、弛緩/伸張時間などの重要なパラメータのリアルタイムでの分析を可能にします。

特徴
ライブセルで非侵襲的に収縮測定が可能
位相差顕微鏡+AI画像解析により、高精度な収縮データ取得
96ウェルプレート対応で、高スループット測定が可能
薬剤添加後のリアルタイム測定が可能
C-Pace/ 筋細胞電気刺激培養装置
イオンオプティクス社のシーペースシステム(C-Pace EM)は、筋細胞へ電気刺激を与えながら培養することができるシステムです。4~24wellまでの専用電極(C-Dish)により、同時に大量の細胞へ電気刺激が可能で、バイポーラ波形の刺激により、電気分解を防ぎ、長時間の刺激培養が可能です。
設置も非常に簡単で、汎用培養プレート(※使用可能なリストはこちら)もそのままお使い頂けますので、装置に電源を接続するだけで、すぐにご使用頂けます!

MyoStretcherシステム
MyoStretcher(マイオ・ストレッチャー)システムは、画期的な光学フォーストランスデューサーによって、心筋細胞の力を測定することができるシステムです。特に心筋細胞の測定用に設計されており、この分野では、現在最も精度が高いシステムと言えます。

他の取り扱い装置は弊社のHPをご覧ください。 お問い合わせは、下のボタンからお願いします。